再生医療の鍵を握る「幹細胞」
実用化が進むスーパー細胞 ASC「脂肪組織幹細胞」

私たちの身体の中には約60兆個の細胞が存在します。脳、心臓、皮膚などあらゆる組織。
私たちの組織は細胞が集まってできており、日常で非常に重要な役割を果たしています。
例えば、皮膚細胞は体内の水分を守る働き、そして外部からの細菌、ウィルスの侵入を防ぐ働きを持っています。
肝細胞は体内に重要な物質をつくり出すと同時に体内に親友してきた不要な物質を分解する役割も持っています。
役割によって数百種類の細胞に分けられます。
それらの細胞の元となる細胞が『幹細胞』です。幹細胞はいろいろな細胞や組織に変化する細胞で、体内の決まった場所に存在します。
組織が損傷した場合などにその組織を補うための細胞を生み出す細胞です。

なぜヒト細胞由来幹細胞なのか?

現在、再生医療を見据えた研究が進められている幹細胞は主に三つに分類されます。

①受精卵からつくられる幹細胞で、すべて細胞になる能力がある
「ES細胞(胚性幹細胞)」
②皮膚など体細胞から取り出した細胞に特定の遺伝子を入れて樹立したもので、ES細胞同様にあらゆる種類の細胞になれる「iPS細胞」
③生体の各組織にあり、特定の細胞に分化する能力を持つ「体性幹細胞」です。

これらの幹細胞の中で、実用化という面で最も進んでいるのが体性幹細胞です。
人工的につくられるES細胞やiPS細胞と異なり、体性幹細胞は私たち自身の体内で実際に働いています。例えば、赤血球や白血球・血小板など血液の細胞をつくる「造血幹細胞」、神経細胞をつくる「神経幹細胞」。骨・軟骨・脂肪・神経など様々な組織をつくることができるとされている「間葉系幹細胞などがそれです。
従来、体性幹細胞の一つ、間葉系幹細胞の中の骨髄由来間葉系幹細胞(以下、骨髄幹細胞)の研究が最も多くなされてきましたが、2001年に脂肪組織中から間葉系幹細胞が発見されると、骨髄幹細胞の100~1000倍もの幹細胞を比較的容易に確保できること、また、骨髄幹細胞が持つ、骨・脂肪・軟骨等へ分化する能力も併せ持っていることなどが証明され、現在は脂肪幹細胞による研究が多く行われています。
脂肪幹細胞(体性幹細胞)は、傷や炎症が起こるとそこへ集まり、まわりの細胞に指令を出して組織を修復しまじめます。
また、皮膚のコラーゲン等を作り出す繊維芽細胞と同等もしくはそれ以上のコラーゲン産生力があることが確認されているため、非常に優秀な幹細胞といれるのです。

脂肪組織由来幹細胞は、脂肪組織の中にごく少量含まれる幹細胞の一種です。
正式名称は「脂肪組織由来幹細胞」ですが、一般的には「脂肪幹細胞」と呼ばれることもあります。脂肪組織から特殊な方法で摂取しますが、通常の脂肪細胞(成熟脂肪細胞)とはまったく別の細胞です。脂肪細胞はエネルギーの貯蔵庫として細胞の中に脂肪滴(中性脂肪の溜まり)を含んだ大きな細胞ですが、脂肪組織由来幹細胞には中世脂肪の溜まりは含まれず、比較的小さな細胞です。